食品構造機能部門

 食品は人間の生命維持と健康の維持・増進のために必須である。食品を人間が好んで選択し,摂取するためには,物理・化学的性質や感覚特性などの面で優れた食品機能特性を備えていることが望ましい。そのために,食品の機能特性と食品構成成分の分子構造との関係を解析し,食品としてあるべき姿についての科学的根拠を解明する。

食品分子構造分野

(教授)廣瀬 正明,(助教授)相原 茂夫,(助手)高橋 延行,山下 穂波

(学振特別研究員)辰巳 英三

(非常勤職員)石橋 純子,酒井 雪枝,宮西 素子

(大学院生)恩田 真紀,有井 康博,水谷 公彦,山崎 正幸,吉松 大介

(1)研究内容

[研究目的]

 食品蛋白質の食品機能特性(ゲル化性,乳化性など)と分子構造との関係を調べ,多様な生物資源を有効利用するための研究を行う。

[研究課題]

(1)卵白蛋白質のX線結晶構造解析(廣瀬,高橋,山下)

 主要な動物性食品蛋白質である卵白蛋白質について,食品機能特性と分子構造との関係を解析するための基盤として,卵白アルブミンとトランスフェリンのX線結晶構造解析を行っている。両蛋白質ともに単結晶の調製に成功しているが,特にトランスフェリンについては,良好な構造解析の結果を得ている。トランスフェリンは鉄を結合して組織に運搬する機能をもつが,ホロ型の構造解析の結果から,N,C2つの相同なローブからなり,各ローブは2つのドメイン(N1/N2及びC1/C2)から構成されいること,また,鉄原子はドメイン間のクレフトに結合していることが分った。

(2)食品蛋白質の変性機構(廣瀬,高橋)

 蛋白質は,通常の生理的な条件下では規則的な構造をもつNative状態(N状態)にある。しかし,加熱など食品加工処理により,このN状態の規則性が失われて変性し,変性状態(D状態)になる。食品蛋白質の物性上の機能特性の発現には,このような変性による高次構造変換が重要な役割を果たす。そこで,蛋白質の三次元的な分子構造変換の機構を卵白のアルブミンとトランスフェリン及び血清アルブミンを材料に研究している。特に,これらの蛋白質が分子内にジスルフィド結合をもつ点に着目し,ジスルフィド結合の還元・切断及びリアレンジメントを指標として高次構造変換の機構を解析している。その結果得られた研究成果として,変性剤存在下のD状態では,蛋白質の立体構造異性体の分布はそのコンフォメーション・エントロピーに依存することを実験的に証明すると共に,D状態とN状態の相互変換の中間体であるモルテン・グロビュール状態が蛋白質のゲル形成に中心的役割を果たすことを明らかにした。

図1 卵白トランスフェリンの結晶構造

(a)はtop view,(b)はside viewを示す。NとCローブは対称軸を中心に平行移動と回転により重なり合う位置関係にある。

(3)卵白蛋白質の高次構造形成機構の研究(廣瀬,高橋,山下)

 アルブミンとトランスフェリンの高次構造形成機構に関する蛋白質工学的アプローチを行うのための基盤として,両蛋白質の大腸菌での遺伝子発現系を確立した。また,D状態からN状態への立体構造形成プロセスの詳細を分子内にジスルフィド結合の形成反応を指標として解析した。その結果,ジスルフィド還元・変性型からの構造再生は,2段階の機構に従うことが分った。

(4)小麦食品の物性と貯蔵の穀物科学(相原)

 食品中の水の状態は貯蔵性だけでなく食品の加工性や物性に対しても重要である。最近,労務管理や製品輸送の観点から冷凍パン生地の利用が注目されるようになり,製パン特性を改善する目的で高電圧場処理などの新しい物理的手法を応用したり,トレハロースの添加により水分の凍結・融解によるパン生地の機能低下を軽減する焼成法を考案した。さらに,基礎研究の一端として,食品成分の分子構造と水分の関連を解明しようとしている。

(5)微小重力環境を利用した蛋白質結晶成長(相原)

 スペースシャトルや宇宙ステーションを利用して宇宙の微小重力環境下で高品質のタンパク質単結晶を調製し,これを用いて蛋白質の三次構造の解明や,新しい技術の開発に関する研究を推進している。また,宇宙の微小重力場における良質のタンパク質単結晶調製法を目標に,タンパク質結晶成長過程の核生成に対する微小重力の影響を結晶内の分子間相互作用を解析することによりX線結晶学的に解明しようとしている。

(2)科学研究費

2.1.文部省科学研究費

廣 瀬 正 明                        (単位:万円)

年 度 種 目 

研   究   課   題 

区 別 
金 額

平成4


平成5

平成6

平成7

試験B   

一般B

一般B

一般B

品質判定機能を有する農産物ハンドリング用知能ロボットシステムの開発

食品蛋白質の分子構造変換による機能特性の発現機構

食品蛋白質の分子構造変換による機能特性の発現機構

食品蛋白質の分子構造変換による機能特性の発現機構

分担/継続   

代表/新規

代表/継続

代表/継続

50


440

150

150

相 原 茂 夫                        (単位:万円)

年 度

種 目 

研   究   課   題 

区 別 
金 額

平成4

平成5

  

平成6


平成7

 


平成8

国際学術共同研究

国際学術共同研究

重  点  2

重  点  2


国際学術共同研究


重  点  2

国際学術共同研究


重  点  2


日本学術振興会・未来開拓研究

微小重力環境を利用した蛋白質の結晶成長

微小重力環境を利用した蛋白質の結晶成長

タンパク質の結晶成長機構に関する研究

宇宙の微小重力場を利用した高品質タンパク質単結晶の調整に関する研究

宇宙の微小重力環境下でのタンパク質結晶化と結晶化容器の開発

時間分割蛋白質結晶構造解析法の研究

宇宙の微小重力環境下でのタンパク質結晶化と結晶化容器の開発

宇宙の微小重力場を利用した高品質タンパク質単結晶の調整に関する研究

放射光による生体高分子結晶構造解析用高速高精度高分解能自動データ収集システムの開発

代表/新規

代表/継続

代表/新規

代表/新規


代表/新規


分担/計画

代表/継続


分担/計画


分担/計画

510

300

180

160


400

 
70

390


100


200

高 橋 延 行                        (単位:万円)

年 度

種 目 

研   究   課   題 

区 別 
金 額

平成4

平成5

平成6

平成8

特別研究員奨励費

一 般 B

一 般 B

奨 励 A

卵白タンパク質の生合成系における高次構造形成機構

食品蛋白質の分子構造変換による機能特性の発現機構

食品蛋白質の分子構造変換による機能特性の発現機構

S-Ovalbuminの生成機構に関するタンパク質工学的研究

代表/継続

分担/新規

分担/継続

代表/新規

100

440

150

110

山 下 穂 波                        (単位:万円)

年 度 種 目 

研   究   課   題 

区 別 
金 額

平成5

平成6

平成7

一般B

一般B

一般B

食品蛋白質の分子構造変換による機能特性の発現機構

食品蛋白質の分子構造変換による機能特性の発現機構

食品蛋白質の分子構造変換による機能特性の発現機構

分担/新規

分担/継続

分担/継続

440

150

150

辰 巳 英 三                        (単位:万円)

年 度

種 目 

研   究   課   題 

区 別 
金 額
平成8 特別研究員奨励費 オボアルブミン高次構造形成機構に関するタンパク質工学的研究 代表/新規

120

(3)学会活動

3.1.各種学会の役員

廣 瀬 正 明

学   会

役   割

就 任 年 月 日

日本農芸化学会

理     事
1995年〜1996年

日本生化学会

評  議  員

生化学誌企画委員

1989年〜

1995年〜

3.2.学会,シンポジウムの役職

相 原 茂 夫

学      会

役   割

就 任 年 月 日
第6回生体高分子結晶成長国際会議(広島)

組 織 委 員

1995年

 

食品機能調節分野

(教授)北畠 直文,(助教授)谷  史人,(助手)小関佐貴代

(学術振興会外国人特別研究員)Alka Mehta

(非常勤博士研究員)中西由季子

(大学院生)桝田 哲哉,宇野千枝子,金子 涼輔,和田 律子,上野 有紀

(1)研究内容

[研究目的]

 食品素材の品質機能や甘味物質のもつ特性を調節する方法を開発することにより新規な食品を創りだす研究を行なう。

[研究課題]

(1)食品機能特性の分子論的解析(北畠,谷,小関)

 食品の機能特性はその栄養性をはじめ,食品構造形成や生理機能などが挙げられる。特に食品におけるタンパク質は栄養素としてのみならず,食品に固有の物性や構造を与える役割を担っている。この特性,すなわち食品タンパク質の機能特性は,i)ゲル化性,組織化性などのいわゆる組織化特性,ii)泡沫特性などの界面特性,そして,iii)水,油や脂溶性化合物などに対する結合特性に大別することができる(図1)。これまでに,主要食品タンパク質である卵白タンパク質,大豆タンパク質,牛乳乳清タンパク質などを材料にして,上記の各特性について研究を行ってきた。特に,タンパク質分子,物質レベルで物性発現機構を解明することを目指している。これらは食品加工の基礎研究であり,その基礎研究において得られた成果を基にして,卵白の加熱透明ゲル,改質乳清タンパク質の開発等の基礎と応用をつなぐ研究も行っている。さらに食品加工の基礎である加熱を主に対象として,食品タンパク質のゲル化性,組織化性,そして粘個性を含む組織化特性を研究している。具体的には,粘楯液,ゲル化物,組織化物(エクストルージョンクッキングなどの方法で調製)などの物性をレオロジー的手法などの巨視的な観察・測定と,その機構を分子レベルの微視的な次元での解析を組み合わせつつ,食品タンパク質の機能調節機構を明らかにすることを目指している。

図1 食品タンパク質の機能特性

食品タンパク質の機能特性は,水,油や脂溶性化合物などを吸水,吸着する結合特性(Binding Prooerties),泡沫や乳化状態を安定化する界面特性(Interfacial Properties),ゲル,組織化タンパクなどを形成する組織化特性(Textual Properties)に大別することができる。これらの一般的機能特性に加えて,特殊な機能特性として酵素活性,(Enzyme Activity)や味覚刺激活性(Taste Activity)を有する食品タンパク質がある。

(2)甘味タンパク質の甘味機能発現の機構に関する研究(北畠)

 特殊な機能を持つ食品タンパク質として甘味タンパク質を取り上げ,その甘味機能発現の機構に関する研究を進めている。味に関わるタンパク質の役割,機能を研究し,食品タンパク質の新たな機能開発を目指す。そのため種々の甘味物質をも視野に入れつつ,甘味の生理学的な意味を栄養学,動物行動学的手法も取り入れながら幅広く研究することを目指している。

(3)食品タンパク質の熱変性構造に関する研究(谷)

 加熱処理は食品の加工において最も頻繁に用いられる手段である。この加熱処理によって食品の主成分であるタンパク質の構造がどのように変化し,加熱ゲル特性のように人間にとって好ましい機能がどのように発現されるのか,またはアレルゲンなどの好ましくない抗原性が出現するのかを分子論的に解析している。卵白アルブミン,リゾチームやウシ血清アルブミンなどの球状タンパク質をある特定のpHやイオン強度下において加熱すると,タンパク質の生化学的諸性質や発生起源に関係なく共通して線状会合体を形成し優れたゲル特性を示すことが知られている。このときの熱変性分子はモルテングロビュール構造と呼ばれるある種の中間的な変性状態にあることを見出した。現在,モノクローナル抗体を用いた生化学的手法やX線溶液散乱などの物理化学的手法を駆使して熱変性構造の特徴を解析している。また,変性分子の会合に関与する疎水性部位の特性を熱ショックタンパク質を用いて検討している。

(2)研究費

2.1.文部省科学研究費

北 畠 直 文                        (単位:万円)

年 度 種 目

研   究   課   題

区 別
金 額

平成4

平成4

平成6

平成7

平成8

一般C

特別奨励

一般C

一般C

基盤C

甘味タンパク質による味覚受容機構の解析

加熱処理による食品成分の化学変化

甘味受容機構の解析

甘味受容機構の解析

甘味タンパク質甘味活性発現機構

代表/新規

代表/新規

代表/新規

代表/継続

代表/新規

170

120

100

100

110

谷   史 人                        (単位:万円)

年 度 種 目

研   究   課   題

区  別
金 額

平成4


平成4

平成5


平成5

平成6

平成7


平成7

平成8

平成8

奨励A


一般B

奨励A


一般C

一般C

奨励A


一般B

萌芽  

一般B

ストレスタンパク質のC末端ペプチド結合ドメインの構造と機能の解析

タンパク質加熱ゲル形成機構の解析と透明ゲルの作製

腸管上皮細胞におけるストレス蛋白質の構造と抗原提示機能の解析

食品タンパク質ゲルネットワークの分子構造

食品タンパク質ゲルネットワークの分子構造 

タンパク質の立体構造形成を支配する新しいモチーフの探索

ストレス応答が老化によって変動する様相とその機構

分子進化から見たタンパク質の折り畳み機構に関する研究

ストレス応答が老化によって変動する様相とその機構

代表/新規


分担/新規

代表/新規


分担/新規

分担/継続

代表/新規


分担/新規

代表/新規

分担/継続

 90


470

90


140

70

90


 430

90

 160

 

小 関 佐貴代                        (単位:万円)

年 度 種 目

研   究   課   題

区  別
金 額

平成5


平成6


平成7

平成8

平成8

一般C


一般C


一般B

一般B

萌芽

加齢に伴って増加する血清タンパク質の同定ならびに加齢の抑制因子の検索

加齢に伴って増加する血清タンパク質の同定ならびに加齢の抑制因子の検索

ストレス応答が老化によって変動する様相とその機構

ストレス応答が老化によって変動する様相とその機構

分子進化から見たタンパク質の折り畳み機構に関する研究

分担/新規


分担/継続


分担/新規

分担/継続

分担/新規

110


140


 430

160

90

 

(3)学会活動

3.1.各種学会の役員

北 畠 直 文

学   会

役   割 
就 任 年 月 日

日本食品科学工学会

全 国 評 議 員

1989年〜

(4)受賞

北 畠 直 文

賞   名

受賞対象研究

受賞年月日
日本食品科学工学学会技術賞(共同受賞)  改質乳清タンパク質の開発と製造  平成9年3月27日

食品感覚特性分野

(教授)森  友彦,(助教授)松村 康生,(助手)林 由佳子,松本 晋也

(技官)樋笠 隆彦,村上  博

(非常勤職員)能瀬友佳子,天岡三千代

(大学院生)川瀬眞市朗,呉  性姫,張  国艶,茂田 栄里,木全 順子,小森       佐和子,土方きみよ,田村  航,榊原 通宏

(1)研究内容

[研究目的]

 食品の有する3つの機能(1次機能:生命維持,2次機能:感覚刺激,3次機能:健康維持・増進)のうち特に2次を対象として,食品の側については感覚的特性の決定要因と発現機作を,摂取するヒトの側については感知メカニズムを,それぞれ明らかにすることを通して,2次機能の科学的な解明を進める。

[研究課題]

(1)食品の感覚特性の客観的な評価法とその要因に関する研究(森,林)

 食品を咀嚼する際に感じる口中感覚を総称してテクスチャーと一般に呼ぶ。テクスチャーの測定(判定,評価)は官能検査により行われてきたが,得られる情報が主観的・定性的であることから,これに代わる定量的測定法の開発のため,機器による物性分析からテクスチャーを数値化して表現する方法についての研究を行い,物性値として力学パラメータを測定することによりテクスチャーを数量化して表現する手法を開発しつつある。現在,「かたさ」,「もろさ」,「弾力性」の三つの要素を尺度としてゲル状食品のテクスチャーが数値的に判別,評価できる段階にいたっており,さらに本手法における物性測定とデータ処理のステップの簡易・迅速化の点ならびにテクスチャーの要因分析への本手法の応用に関して研究を進めている。

(2)食品エマルション中の油水界面における諸反応の解析(松村)

 食品においては生体系同様,水と脂質が混じり合った状態で存在しており,これら二つの成分の境界領域で起こる反応は極めて重要な意味を持っている。我々は,油滴が水中に分散した状態のO/W型エマルションをモデル系として,油水界面における諸反応,例えば酵素反応が界面化学的パラメータによってどのように制御されているのか,またそのような諸反応がエマルションの食品としての特性をどのように決定しているのかについて検討を加えている。一例として,食品中での脂質酸化やフレーバー生成に関わっているリポキシゲナーゼを対象とした研究を行っており,この酵素の油水界面における反応性が,界面に吸着している物質や界面張力のレベルによって著しく変化することを見出している。また,油水界面に吸着したタンパク質や乳化剤の種類及び相互作用によって,エマルション全体のテクスチャーや味・香りの感じ方がどのように変化するのか,興味を持って実験を行っている。

(3)脊椎動物の味覚受容機構(林,松本,森)

 脊椎動物は食物の摂取に際して味を指標にすることが知られている。このことは生命の維持のために味覚が重要な役割を果たしていることを示している。五基本味の中でも苦味,甘味,うま味は受容体を介して味の認識が行われていると考えられており,それらの味物質が薬効成分や毒物あるいは栄養成分である点から興味深い研究対象である。しかしその受容機構はもとより受容体も明らかではない。本研究では,生理・分子生物学・生化学的に受容体を介した味覚受容というものにマルチアングルでアプローチし,その機構を解明することを目指している。そして単離味細胞を用いたパッチクランプ法による受容機構の生理学的解析から,苦味におけるcNMPが関与する受容機構に携わるチャネルをはじめてとらえた(図1)。現在,他の基本味を含めた受容機構について更なる解析に加え,クエンチフロー法による味受容時におけるセカンドメッセンジャーの定量を始めている。

(4)アフリカツメガエル卵母細胞を用いた味覚レセプターのクローニングとその解析(松本,森)

 味覚は食物の識別や摂取,毒性物質の忌避などに関わる重要な感覚である。これまでの研究から五基本味(甘味,苦味,酸味,塩味,旨味)のうち,甘味,苦味,うま味は呈味物質が味細胞上の味覚レセプターと結合することにより感知されるというメカニズムが提唱されている。しかし,味覚レセプターについてはいくつかの候補がクローニングされているものの,これらはいずれも分子生物学的手法で取得されたものであり,これらが生化学的または電気生理学的に味覚レセプターとして機能することは示されていない。このことから味覚レセプターのクローニング,さらにはその解析には味覚レセプターの機能(具体的にはリガンドである呈味物質との結合能,エフェクター分子の活性化能など)を指標とした解析系が最も望ましいと考えられる。本研究ではアフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いた味覚レセプターのクローニングおよび味覚レセプターの解析を目指している(図2)。アフリカツメガエル卵母細胞発現系は既に神経伝達物質レセプターのクローニングなどでその有効性は示されており,機能を指標とした解析系が望まれる味覚レセプターのクローニングにも同様の効果を発揮することが考えられる。現在,サッカリンに対する味覚レセプターのクローニングを進めている。

   

図1 パッチクランプ状態のマウス味細胞左のピペットからの味刺激に対する細胞応答(電気的応答を右のパッチピペット(中に電極が入っている)で記録する。 図2アフリカツメガエル卵母細胞。動物極(黒い半球)と植物極(白い半球)の境界が明瞭であり,良好な状態の卵母細胞である。これらにRNAを注入して外来たんぱく質を発現させる。

  

(5)食品高分子のゲル形成機構(森,松村)

 食品ゲルにはタンパク質性と多糖類性の2種類がある。前者の典型例として豆類タンパク質の主要成分である11Sグロブリンについてゲル化の機構の分子レベルでの解明を進めている。また,後者の代表的なものとしてデンプンのゲル化についての研究に着手している。本研究においては,これまで主に加熱によるゲル化に焦点を絞ってきたが,現在,加熱の他に,架橋酵素による11Sグロブリンのゲル化についても解明を進めており,加熱法と酵素法の組み合わせによる新たな物性コントロール手法の開発を目指している。

(2)研究費

2.1.文部省科学研究費

森  友彦                          (単位:万円)

年 度 種 目

研    究   課   題

区  別
金 額

平成7


平成8


平成8

一般C


基盤C


国際学術

食品の力学的特性に基づくテクスチャーの定量的測定に関する研究

食品の力学的特性に基づくテクスチャーの定量的測定に関する研究

うま味の受容メカニズムに関する共同石研究:味受容器におけるグルタミン酸応答の解析

代表/新規


代表/継続


代表/新規

160


70


320

松 村 康 生                        (単位:万円)

年 度 種 目

研    究   課   題

区  別
金 額

平成7


平成8

一般C


基盤C

食品系および生体系膜モデル中の脂質分子のコンフォメーションと酸化的損傷

食品系および生体系膜モデル中の脂質分子のコンフォメーションと酸化的損傷

代表/新規


代表/継続

130


90

林 由 佳 子                        (単位:万円)

年 度

種 目

研    究   課   題

区  別
金 額

平成7


平成8


平成8

一般C


基盤C


国際学術

食品の力学的特性に基づくテクスチャーの定量的測定に関する研究

食品の力学的特性に基づくテクスチャーの定量的測定に関する研究

うま味の受容メカニズムに関する共同研究:味受容器におけるグルタミン酸応答の解析

分担/新規


分担/継続


分担/新規

160


70


320

松 本 晋 也                        (単位:万円)

年 度

種 目

研    究   課   題

区  別
金 額

平成8

平成8

奨励A  

国際学術

コラーゲンゲル培養法を用いた味蕾形成機構に関する研究

うま味の受容メカニズムに関する共同研究:味受容器におけるグルタミン酸応答の解析

代表/  

分担/新規

100

320

(3)学会活動

3.1.各種学会の役員

 森  友 彦

学   会

役   割
就 任 年 月 日
日本農芸化学会

評  議  員
1991年〜
日本生化学会

評  議  員

1993年〜1996年
日本食品科学工学会

理事,関西支部長
1995年〜1996年
日本咀嚼学会

理     事
1996年〜
味と匂学会

運 営 委 員
1996年〜
食品物性シンポジウム

運 営 委 員
1996年〜

松 村 康 生

学    会

役    割

就 任 年 月 日

食品物性シンポジウム

運 営 委 員

1996年〜
 

(4)受   賞

森  友 彦,松 村 康 生

賞  名

受 賞 対 象 研 究 

受賞年月日
アメリカ油化学会 Archer Daniels Midland Award (優秀論文賞) Characterization of Texture and Mechanical Properties of Heatinduced Soy Protein Gels:大豆タンパク質のテクスチャーおよび力学的特性の分析に関する研究 平成4年5月11日

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